「玄米を食べると貧血になると聞いて不安を感じている」「フィチン酸が鉄の吸収を妨げるらしいけど、玄米を続けて大丈夫なのか知りたい」
このような悩みをお持ちではないでしょうか。
結論として、バランスの取れた食事をしていれば玄米だけが原因で貧血になる可能性は低いです。
「玄米で貧血になる」という説は、フィチン酸が鉄の吸収を阻害する作用に基づいています。しかし、この主張の多くは限定的な実験条件での結果であり、通常の食事量であれば過度に心配する必要はありません。
本記事では、玄米と貧血の関係について整理したうえで、フィチン酸を減らす炊き方や等を具体的に紹介します。
玄米を食べると貧血になると言われる理由

玄米を食べると貧血になると言われる理由として、以下が挙げられます。
理由
- フィチン酸が腸内で鉄と結合して吸収を妨げる
- 非ヘム鉄はヘム鉄より吸収阻害の影響を受けやすい
- 「玄米で貧血」説は限定的な条件下の研究が根拠になっている
フィチン酸が腸内で鉄と結合して吸収を妨げる
フィチン酸(イノシトール六リン酸)は、玄米の糠層や胚芽に多く含まれる天然の成分です。
このフィチン酸にはキレート作用があり、腸内で鉄や亜鉛、カルシウムなどのミネラルと強く結合する性質を持っています。
この作用が「玄米を食べると鉄が不足する」と言われる根拠になっています。
ただし、キレート作用の強さは食事全体の栄養バランスや調理法によって大きく変わる点を理解しておく必要があります。
非ヘム鉄はヘム鉄より吸収阻害の影響を受けやすい
食品に含まれる鉄には、肉や魚に多い「ヘム鉄」と、植物性食品に多い「非ヘム鉄」の2種類があります。
管理人玄米に含まれる鉄はすべて非ヘム鉄です。
非ヘム鉄の吸収率は2〜5%程度で、ヘム鉄の15〜25%と比べると大幅に低い特徴があります。
さらに非ヘム鉄はフィチン酸やタンニンなどの阻害因子の影響を受けやすく、吸収率がさらに低下する可能性があります。
一方でヘム鉄は、フィチン酸の影響をほとんど受けずに吸収されます。
このため、玄米に含まれる鉄分はフィチン酸の影響を特に受けやすい状態にあると言えます。
ただし、これは玄米に限った話ではなく、ほうれん草や大豆など植物性食品の鉄すべてに共通する性質です。
「玄米で貧血」説は限定的な条件下の研究が根拠になっている
「フィチン酸が鉄の吸収を妨げる」という研究結果は事実ですが、その多くは日常的な食事とはかけ離れた実験条件で得られたものです。
たとえば、精製したフィチン酸を単独で大量に投与した実験や、他の食品をほとんど摂らずにフィチン酸を含む食品だけを食べさせた試験が根拠とされています。
また、これらの研究では食事全体のバランスが考慮されていない場合が多く、実際の食卓では肉や魚、野菜を組み合わせて食べるため、フィチン酸の影響は研究結果ほど大きくならないと考えられています。
玄米と白米の鉄分・ミネラル含有量の違い


「フィチン酸が鉄を吸収しにくくする」という情報だけを見ると玄米が不利に思えますが、そもそもの栄養素含有量を白米と比較すると、玄米の方が圧倒的に多くのミネラルを含んでいます。
玄米と白米の含有量の違いについて確認していきましょう。
>>玄米と白米の栄養の違いについて詳しく知りたい方は「玄米の栄養がすごい!期待できる効果や豊富な栄養素、白米との違いまでわかりやすく解説」の記事もあわせてご覧ください。
鉄分は玄米0.6mg・白米0.1mgで約6倍の差がある
日本食品標準成分表(八訂)によると、炊飯前の状態で玄米100gあたりの鉄分は0.6mg、精白米は0.1mgです。玄米は白米の約6倍の鉄分を含んでいることになります。
炊飯後(めし)の状態でも、玄米ごはん100gあたり0.3mg、白米ごはん100gあたり0.1mgと、玄米が約3倍上回ります。
フィチン酸による吸収阻害があったとしても、含有量そのものが大きく異なるため、最終的に体内に取り込める鉄の量は玄米の方が多くなる可能性があります。
亜鉛・銅・マグネシウムも玄米が大きく上回る
鉄以外のミネラルについても、玄米は白米を大きく上回ります。
これらのミネラルは造血や免疫機能、エネルギー代謝に深く関わっています。
特に銅は鉄の代謝を助ける補酵素として機能するため、銅が不足すると鉄を十分に摂取していても貧血になることがあります。
葉酸やビタミンB群は玄米に豊富に含まれる
貧血の予防には鉄だけでなく、赤血球の生成に関わる葉酸やビタミンB群も重要です。玄米100gあたりの葉酸は27μgで、白米の12μgに対して約2.3倍含まれています。
ビタミンB6も玄米は0.45mg含まれ、白米の0.12mgの約3.8倍です。ビタミンB6はヘモグロビンの合成に必要な栄養素であり、不足すると「鉄芽球性貧血」と呼ばれる特殊な貧血を引き起こすことがあります。
このように、玄米には貧血予防に必要な複数の栄養素が白米よりはるかに多く含まれています。
食物繊維は玄米が白米の約6倍含まれる
玄米100gあたりの食物繊維は3.0gで、白米の0.5gと比べて約6倍の量を含んでいます。食物繊維は腸内環境を整え、血糖値の急上昇を抑えるなど多くのメリットがある栄養素です。



ただし、食物繊維が腸内でミネラルの吸収に影響を与える可能性も指摘されています。
不溶性食物繊維は腸内の通過速度を早めるため、ミネラルが吸収される時間が短くなることがあります。
とはいえ、食物繊維による鉄吸収への影響はフィチン酸ほど大きくないとされており、食物繊維の健康効果を考えればデメリットよりメリットの方が大きいと考えられます。
フィチン酸を減らす玄米の食べ方


フィチン酸を減らす玄米の食べ方として、以下が挙げられます。
食べ方
- 6〜12時間以上浸水してから炊く
- 発芽玄米にしてフィチン酸を分解する
- 酵素玄米(寝かせ玄米)にして消化吸収を高める
- 圧力鍋で炊いてフィチン酸の影響を軽減する
6〜12時間以上浸水してから炊く
玄米を水に浸けておくと、玄米に含まれる酵素「フィターゼ」が活性化し、フィチン酸を分解し始めます。この分解作用は浸水時間が長いほど進み、6時間以上の浸水でフィチン酸が20〜30%程度減少するとされています。
浸水後は水を捨てて新しい水で炊飯します。
浸水中に溶け出したフィチン酸やアクを除去できるため、食味も向上します。炊飯前のひと手間で、フィチン酸の影響を手軽に軽減できる方法です。
発芽玄米にしてフィチン酸を分解する
発芽玄米は、玄米をわずかに発芽させた状態のものです。発芽過程では種子内のフィターゼが強く活性化し、フィチン酸が大幅に分解されます。
発芽によってGABA(γ-アミノ酪酸)も増加するため、リラックス効果や血圧調整効果も期待できます。フィチン酸が気になる方には、最も効果的な対処法のひとつです。
発芽玄米について詳しく知りたい方は「発芽玄米とは?期待できる効果や栄養、作り方、注意点まで解説」の記事もあわせてご覧ください。
酵素玄米(寝かせ玄米)にして消化吸収を高める
酵素玄米は、玄米を小豆と塩と一緒に炊き、3〜4日間保温し続けて熟成させたものです。熟成期間中に酵素の働きが進み、フィチン酸の分解が促進されるとともに、たんぱく質やでんぷんも分解されて消化吸収しやすい状態になります。
もちもちとした食感で食べやすく、玄米独特の硬さやパサつきが苦手な方でも続けやすいのが特徴です。小豆にも鉄分(100gあたり5.4mg)が豊富に含まれているため、鉄の摂取量を底上げする効果もあります。
酵素玄米について詳しく知りたい方は「寝かせ玄米とは?効果や作り方、酵素玄米との違いまで詳しく解説」の記事もあわせてご覧ください。
圧力鍋で炊いてフィチン酸の影響を軽減する
圧力鍋を使った炊飯では、通常の炊飯器よりも高い温度(約120℃)と圧力がかかります。この高温高圧環境によってフィチン酸の分子構造が変化し、ミネラルとの結合力が弱まるとされています。
さらに圧力鍋で炊いた玄米はでんぷんのα化(糊化)が十分に進むため、消化しやすくもちもちとした食感に仕上がります。
炊き方のポイントは、玄米1合に対して水を1.5〜1.7倍程度にすること、加圧時間を20〜25分にすることです。
玄米との食べ合わせで鉄吸収を高める献立例


玄米と相性のよいおかずを組み合わせることで、フィチン酸の影響を補いながら効率的に鉄を摂取できます。
ここでは和食の定番食材を使った具体的な献立を4つ紹介します。
玄米+あさりの味噌汁+大根おろしで鉄とビタミンCを同時に摂る
あさりはヘム鉄を豊富に含む食材で、むき身100gあたり3.8mgの鉄を含んでいます。味噌汁にすれば汁に溶け出した鉄分も余さず摂取でき、発酵食品である味噌の効果でミネラルの吸収も促進されます。
ここに大根おろしを添えた副菜(焼き魚の付け合わせなど)を加えることで、ビタミンCによる非ヘム鉄の吸収促進効果が得られます。
大根おろし100gには約12mgのビタミンCが含まれ、加熱せずそのまま食べるため損失も少なくて済みます。
朝食や昼食の定番として取り入れやすく、手間もかからない組み合わせです。
玄米+焼き鮭+小松菜のおひたしで非ヘム鉄の吸収を助ける
焼き鮭は動物性たんぱく質が豊富で、MFPファクターによる鉄吸収促進効果が期待できます。鮭1切れ(80g程度)で約15gのたんぱく質を摂取でき、玄米に含まれる非ヘム鉄の吸収率を高めてくれます。
小松菜はほうれん草と並ぶ鉄分豊富な葉野菜で、100gあたり2.8mgの鉄を含みます。おひたしにすれば手軽に作れるうえ、かつお節をかけることで動物性たんぱく質もプラスされます。
和食の朝ごはんの定番である「玄米+焼き魚+青菜のおひたし+味噌汁」は、栄養バランスの面でも鉄吸収の面でも理にかなった組み合わせです。
玄米+納豆+かぼちゃの煮物で発酵食品の力を活かす
納豆は大豆の発酵食品ですが、発酵の過程で大豆に含まれるフィチン酸の一部が分解されるため、ミネラルの吸収率が生の大豆より向上しています。納豆1パック(50g)あたり約1.7mgの鉄と、60μgの葉酸が含まれています。
さらに納豆にはビタミンK2が豊富で、骨の健康維持にも役立ちます。玄米との相性も良く、もちもちした玄米ごはんに納豆をかけて食べるのは、忙しい日の朝食としても手軽です。
かぼちゃの煮物を副菜に添えることで、β-カロテンとビタミンCが補えます。かぼちゃ100gあたりのビタミンCは43mgと比較的豊富で、煮物にしても加熱損失が少ないのが特徴です。シンプルながら鉄分・ビタミン・食物繊維をバランスよく摂れる献立です。
玄米と貧血に関するよくある質問
発芽玄米にすれば貧血の心配はなくなりますか?
発芽処理によりフィチン酸は40〜60%程度減少しますが、完全になくなるわけではありません。発芽玄米はミネラルの吸収率が通常の玄米より向上するため貧血リスクは軽減されますが、それだけで安心とは言い切れません。ビタミンCや動物性たんぱく質を含む副菜を組み合わせ、食事全体で鉄の吸収を高める工夫を続けることが大切です。
玄米と白米を混ぜて炊くとフィチン酸の影響は減りますか?
玄米の割合を減らせば、1食あたりのフィチン酸摂取量もその分少なくなります。たとえば白米2:玄米1の割合で炊けば、フィチン酸の量は玄米100%の場合の約3分の1に抑えられます。玄米の栄養を適度に取り入れつつフィチン酸の影響を抑えたい方には、混ぜ炊きは現実的な選択肢です。
玄米を毎日食べ続けても貧血にならないですか?
バランスの取れた食事をしていれば、毎日玄米を食べても貧血になる可能性は低いです。肉・魚・野菜・大豆製品を適切に組み合わせ、鉄やビタミンCを意識的に摂取することが重要です。ただし、もともと鉄欠乏気味の方や月経量が多い方は、定期的に血液検査を受けて貧血の兆候がないか確認することをおすすめします。


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